2016年1月30日土曜日



高速道路を走っている途中
気がつくと車のヘッドライトがついて、
周りが暗くなっている。
 
トンネルを長く走っていたり
雨が降って濃い霧がでていたから
日が落ちているのも気がつかなかった。
 
薄暗い空を見ていたら
今日もあとすこし。と、思えて
心まで真っ白になるような長野の雪原も遠くなって
さびしさとあたたかさがじんわりと湧いてくる。
 
子どもの頃
夜の前の薄闇が部屋に渡って
その中でおじいちゃんが分厚い眼鏡をかけて
テレビでお相撲やニュースを観ていた。
 
隣の台所でお母さんとおばあちゃんが晩ご飯の支度をしていた。
 
あそびが冷めていくようで
鉛筆はかたい。
絨毯のあとがついた膝。
 
おじいちゃんの横顔を思い出していた。
 
 
写真撮影やスケッチは昨日のうちに終わって
長野を発つ今日は
起きたそばから
雪が降り積もっていく中を、
分厚い積雪に足沈ませながら歩いたり
そりで遊んだりしたので
朝ご飯をいただいている時から、からだは心地よく疲れていて
ぽうっと眠たかった。
 
最終確認のような打ち合わせをして
帰路につく。
 
栃木から来た写真家の矢野くんと
おそばを食べて長野で別れ、
佐田さんの運転する車でまた、関西まで。
 
高速にのって途中、
隣車線を走っている高速バスを見たとき
先日のバス事故のことがふと浮かぶ。
ぼんやりとしているのでその後
目はあいたままなのに、夢をみていた。
 
夢の中でみたのは
すこし年上の中年女性が
亡くなる場面。
女性がわたしに教えてくれる。
「人間は、死ぬときに自分が亡くなったことがわからないの。
亡くなって、こうやって周りで悲しんでいるひとをみて
自分が亡くなったことが、わかる」
 
はっと夢からさめて
隣で運転している佐田さんに、
いまみてたものの話を聞いてもらう。
それから
「ひとりで亡くなったひとはどうするんだろう。
あ、倒れているじぶんの体をみて、わかるのかな」
と話しながら
『人間は、死ぬときに自分が亡くなったことがわからないの』
という言葉を思い出して
「祈りって、だいじなんだね」
そう思って、そう口にした。
 
彷徨わず、天に昇れるように。
 
佐田さんは
同意ともとれない、不思議な相づちをして
前をみていた。
 
後部座席にはチャイルドシート
 
自分が唐突なことを口にしたときの
納得しているわけでもない、受容の態度から
彼がお父さんであることが
わかるような感じがする。
 
わたしはお母さんになったり、するのだろうかな
そう、ふわっと思った。
 
 
 

何度かインターで休憩をして
高速を降りて大阪の街に入ったとき
道沿いに大きなイオンがあるのが目に入った瞬間
すごく痛い感じがした。
 
「なんか痛い」
「何が?イオン?建物が?」
「イオンが。大きいのが痛い」
 
仕事のことやお金のことを
この頃、よく考えていて
長野ではひとつすっきりと、
今のところのこたえがあらわれた感じがあった。
 
イオンモールの建物は大きすぎて
それを支える力を感じると、すごく痛かった。
 
支えるのをやめたとたんに
全身が潰れてしまうような大きなものは
すごく、痛い感じがする。
 
 
 
 

長野滞在中に泊まった建物は
セルフビルドの心地よい小屋で
壁があっても
隣の部屋の音は仕切られていないようによく聞こえた。
 
わたしは三部屋並んだ真ん中の部屋をもらっていたから
さきちゃんと恋人が1日の報告をし合っているような会話も
佐田さんと矢野くんが笑い合っている声も
なんとなく、聞こえてくる中で眠った。
 
 
 


「なおちゃん、いいひと見つけて」
「…好きな人がほしいな、と思っていたけど
 自分を好きになってくれる人がいるか、なんじゃないかな
 って、なんか今思う」

ころころと転がる話題のなかで
そんな会話を佐田さんとしながら
好きだと言ってくれたけど、
コツンと関係性の真ん中に
石つぶが落ちるような
さびしい感じのひともいたな、と思い出す。
 
その人といるとき、私はすごく気を遣っていて
それを好きと言われても、ということだったのかな
と、思いながら
 
友人が先日
『自分の存在を自分以上に深く感じてくれている気がする』
そう言ってくれたことを思い出す。
 
そういう出会い方ができたら
ひとつひとつが、奇跡だなと思う。
 
 
自分の暮らしているマンションが近づいてくると
ラブホテルのネオンが光る。
 
「なんか、欲望の中に住んでいるなぁ」
 
と言ったら
佐田さんが笑った。



 


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