2016年2月28日日曜日

2月は28日。今年は1日増えて29日。
 
2月29日まで。と
もう何度も確認しているのに、
体感は、30、31日と
3月1日までの間にしっかり48時間を確保していて
29日の翌日が
3月1日なんだ!
 
と、ここ数日驚いている。
 
「やばない?」と、石山さんの声が頭の中で鳴る。
「やばいよな」
 

春だ。
 

 
2月中に、終わらすこと。と思っていたこと
カレンダーを何度も見ているのに
どう考えても
架空の2日間(2月30日、31日)を含んで
進行分配をしていた自分がいて
 
29日で2月はきっぱりと終わりだ。

わかっていたはずのことをもう一度
くっきりと、はっきりと、通達されているような
そんな今日にいる。

でも、おかげで圧がかかって、
ぐっと、集中して取り組めている部分もある。


 


2016年2月24日水曜日

 
先週の出来事のつづきを書こうと思うと、

陽子さんと別れ
バスに乗って
翌朝の7時前に、新宿駅西口に到着した。
 
新宿駅の朝。小田急の下の横断歩道。
 
「時間はここにも、あったんだな」

そんな風に感じる。
 
毎日、夜がきて、朝がきて、
時が流れている。
 
ホームレスのひとの、眠る横を歩いて
西武線に乗る。
 
 

 
 
埼玉の旅、
大事なひとに会い、過ごす
目的一点の、一泊二日。
 
忘れられない時間になった。
 
 

 

池袋から、
また夜行バスに乗って
7時前、梅田に着く。
 
バスプールから梅田駅までを
もう迷わずに
歩くことができる。
 
10時からは事務所で
また
ひとと出会う日。
 
家に帰って荷物を置いて、
湯船に湯をためる。
 
夜は友人が泊まるので
その支度もする。
 
ここまで、
土曜日の、朝までの風景。
 
 
その後の出来事はいったん置いて
週が明け
火曜日の風景。
 
 
とにかく、先週1週間の
ひととの出会い、物理的な移動の影響を受けて
気持ちがいっぱいいっぱいで
火曜日の午前中は
めいっぱい時間をかけて、
このブログに
先週あたまの出来事を書き綴った。
 
書かないと、
ふたが
とじないような
そんな感じがあって。
 
 
夕方からお芋屋さんがあったので
その前に事務所へ行く。
聡くんから仕事の打ち合わせができたら
と前日に連絡をもらっていた。
 
事務所に着いたら聡くんがいて
「なおは月にいくら稼いだら暮らしていけるの?」
という切り出しから
一緒に毎月の収支を見つめていくことになる。
 
フェンスワークスでは
自分でつくった仕事が自分の収入になる。
仕事が生まれなければ、収入がない。
 
なんとかなるか。
なんとかするしかないし。
 
と思っていたけど

自分が生きていくためのその部分を
誰かが一緒に見てくれるというのは
すごく大きなことだ。
 
聡くんは
「自分のためでもあんねん。だからいい人なわけちゃう」
と言ったけど

ありがたい気持ちでいっぱいになって
「聡くん、握手していい?」
そう言って、握手を求めてしまう。
 
てのひらを、あてたかった。

 
なっちゃんもやって来て、テーブルに就く。

生活費の見直しをしながら
食費や遊びの部分を、わたしがどんどん削ろうとするのを見て
聡くんが
「無理はあかんねん。できなくなるから」
と言った言葉にハッとして
「うわぁぁ!ダイエットと同じだね。食べなきゃ痩せる!と思って、
でも食べないでいられない。うわぁぁ、できないことを、できるって言わない、だ」
と衝撃を受けて、『できないことをできるといわない』とメモをとっていると
 
「この打ち合せおもしろそうだな」
Macの画面を見つめながら、なっちゃんがそう言って笑った。
 
けんちゃんもやって来て
なんだかどんどん、楽しい感じになってきて
まだここにいたい、と思うけれど
スマホのアラームが鳴って時刻を知らせるので
中央線に乗って、
お芋屋さんへ向かった。
 
お芋屋さんへ着くと
しょこちゃんが
新しく入った女の子に仕事を教えていた。
 
次回からのひとりシフトを、
「どうしよう」と言って、新しく入ったNちゃんが不安がっているので
「だいじょうぶ」と話す。
隣のお店の人が、教えてくれるし
多少失敗しても、ひとが死なない。それは大きい。


「だいじょうぶって話してもらってちょっと安心した。癒されたー」
「ナオチンゲールに癒してもらってたんや」
「ナオチンゲール…」
「なおさんは蜜香屋のナイチンゲールやん」
 
しょこちゃんが、笑って言う。
 
しょこちゃんの、小さな顔。
あごがしゅっと、細くて
でも頬は赤ちゃんみたいに、紅潮して張りがあって、
猫のような瞳に、ばさっと長い睫毛。
 
かわいいな、と思って、いつもまじまじ、見つめてしまう。
 
 

しょこちゃんとNちゃんが接客しているので
わたしはスイーツに賞味期限シールを貼ったり、包装作業を進める。
 
ふと顔を上げると
店の前に石山さんが来てて
3人で並んでいるのを見て
「人数多くておもろいな」
と言った。
 
緊張しているNちゃんに
「変なこと、いっぱいしてください」
と言っている。
 
「時空歪ませたいねん。ここ(百貨店)の、しゅっとした空気んなか、この店のとこだけ、なんかちょっと変、っていうか、違う時空を持ち込みたい」
 
「時空を歪ませる…」

「うん。最近よく考えててん。時空歪ます」
 
石山さんは
「カメハメ波、出す」というような口調で
現実を話す。
 
カメハメ波を、物理的な法則、地球に適応した法則をもって
本気で出そうとしていて
それが出る、と確信をもった上で
「カメハメ波、出す」
と言う。
 
だから石山さんは
時空は歪むと確信していて
「時空を歪ませたい」と
比喩ではなくて
本気で言っている。
 
「ちょっと斜めになったりしてな」
と言って、からだをいつぞやのふかわりょうのネタのように
斜めにしたので、みんなで笑った。

 


 

 









 
 

 

 

 
 

2016年2月23日火曜日

一週間


 
振り返ってみても、
先週は、数ヶ月分の旅をしていたような
1週間だった。
 
なんだかぐんぐんと、色んなことが巡り始めて
知恵熱が出たのか、この頃の温度差が自律神経に響いたか
月曜日の夜に吐き気と頭痛が急にやってきて
その日のうちに、翌日の仕事を休みにさせてもらった。
 

色々が、ぐっと密になっていて
でもからだが追いつかないような感じがあって
ひと晩眠ったら、
頭痛もなにも、なくなっていたけれど
すこし、隙間がほしい。と思って
仕事はそのまま休ませていただくことにした。
 
 
ふと、篠山へ行きたい。と思って
佐田さんのところを訪ねた。
電車に乗って1時間以上、ごとごとと行く。
神戸を越えて、三田を過ぎて、
景色が変わっていく。
 
冬枯れた田畑、
そのむこう
もう春のあかるい緑が、生まれ始めている山の色。
山の岩肌。空。
 
佐田さんは、篠山に土地を買った。
もともとあったプレハブ小屋を土台にして、
家族で暮らす家を作ろうとしている。
 
篠山口の駅
佐田さんの軽トラが迎えてくれて
彼の同級生の、ぶんぶんという男の子も合流し
一緒に佐田さんの土地へ行く。
 
佐田さんとぶんぶんが、大工さんが入る前に
倉庫として使われていたプレハブの内装の解体をしていく。
わたしは、ほうきで、
周りを掃いたりしていた。
 
猟を始めている佐田さんが、
「山に仕掛けた罠の見回りへ行く」
と言っていなくなって
薪ストーブの前でぶんぶんとふたりになった。
 
ぶんぶんは、とてもしずかな口調で
ことばをひとつひとつ
やわらかく置いていくように、話すひとだった。
黙っていても、喋っても、一緒にいる感じがするひとだった。
 
「なおちゃんは結婚せえへんの?」
「する予定でいます」
「え!いつ?」
「いいひとが見つかったら」
「そーゆーことか。もてるやろ」
「…(もてへん。というか独身のひとが、おらんねん)佐田さんに紹介してもらおうと思う」
「俺も結婚するって思ってなかったんやけど、これからのこと考えたときに、この子しかおらんなって思った」
 
ぶんぶんは夏に、結婚式を挙げる。
 



「俺の兄ちゃんの友だちが、ALSになって、もう目しか、動かせへんの。でもその人な、ヘルパーできてた女性と結婚してん。すげぇなぁって思って」

「そうかぁ…。わたしさ、ヘルパーやっていたから、それはあるなって、わかるの。
私もヘルパーの仕事をしていた時に、
生まれつきの筋ジストロフィーっていう病気で、
からだは子どもみたいに小さくて、車椅子で生活している男性がいたのだけど、
わたしこの人のこと、好きになるな、と思ってた。
でも、自分の介助していたひとの、職場のひとだったし
直接の関わりじゃなかったから、そうならなかったけど、
すごく、いいなって思っていたんだ。
けっこう、関係ないんだよ。
でも、わたしがすごいな、と思うのは、女性の方じゃなくて
そのALSになった、男性の方。
障害を持ったら、恋ができないと思っているひとは多い。
自分の存在が、負担になると感じるからだと思う。
だから、もう恋をしないと決めているひともたくさんいる。
それでも、相手を受け入れて、結婚した、そのひとが、すごい」
 
身をまかすほうが、勇気がいることも、ある。
 
 
 
ヘルパーの仕事をしていた時には
素っ裸で、身を預けてくれる
そのひとの信念の美しさに
本当に何度もうたれた。
 
そこに助けられて
働いていた。
 
 
ぶんぶんは、静かにお茶をすする。
火のそばは、あたたかい。
 
篠山はその日も雪が降った。
 
山から戻ってきた佐田さんが、寒かろうとセーターを貸してくれた。
 
「ここにいると、どういう風に暮らしていきたいのかが、よくわかるな」

ぶんぶんがそう言った。

 
 
翌朝、
埼玉から陽子さんが来てくれた。
夜行バスに乗って。
 
朝、九条の駅で陽子さんと待ち合わせる。
 
家に来てもらって
シャワーをすすめたけれど、
お風呂に入ってきたと話してくれたので
桶にお湯はって、足湯してもらった。
 


さおりさんのアトリエでお手伝いさせていただいていた時、
作業でからだがこりかたまっては
順番に足浴した。



その時の、桶に湯をはって、白湯をいれて、タオルを用意してくれる
さおりさんの手際は見事で
与えられていたひとつひとつの所作が、
いつからか私の中にも宿り始めた。
 





陽子さんと
朝ご飯を食べたり
wica groceryのわくわくする打ち合わせをぱーっとする。
 


陽子さんが行きたいな、
と考えていたお店は定休日で
大阪を案内できるほど、わたしもまだここをよく知らない。
 
佐田さんに会ってもらいたい、と、ふと思った。
陽子さんから話を聞いていた、栃木にあるお店で
彼は4年間、働いていた。
 
何か繋がるものが、あるような感じがしたし
どこかわからない場所を案内するよりも
ひとりの人に会う方がきっと豊かだと思えた。
 


篠山へ向かう前に
事務所にバイト先の焼き芋を置いておくね、と聡くんに伝えていたので
陽子さんにすこし、部屋で待っていてもらって
自転車を漕いで事務所までお芋を持っていくと
事務所の前で聡くんがタバコを吸っていた。



 
陽子さんとの埼玉時空間にいたので
聡くんと会って大阪時空間が生まれ
時空のはざまで、すこしぐらつく。
 
そのことを話しながら
「ひとが時空を連れてくるね」
と伝えると
「ひとが時間だって言ってた」

聡くんと橋本さんが、昨日ちょうど話していたことを
聡くんが伝えてくれた。


ひとが、時間。


 



事務所から戻って身支度をして
阪神の駅から電車に乗って
陽子さんと篠山へ向かう。
 

陽子さんは、ふっと目を閉じて
かるく眠っているようだった。
 
長い距離を、ひと晩かけて
やってきてくれたんだ。と思うと、
じんわり嬉しくなった。

そしてさらに、時間をかけて移動してもらっている
このことが陽子さんにとって、よいことなのか
まだわからないから、すこし心細くなった。
 


陽子さんのトレンチコートの、
きれいな生地。
やわらかな影。
 
目を覚ますたびに、変わる車窓の景色。
 
 
篠山に着くと
佐田さんが軽トラで迎えにきてくれる。

荷台に畳が敷いてある。
そう、軽トラはふたり乗り。

わたしは荷台に乗って、
上からブルーシートをかけてもらう。
 
陽子さんと佐田さんが
車の中で何を話しているのかは聞こえてこない。
軽トラの走る振動と、ブルーシートの綺麗な青。
 
養豚になった気持ち。
(こんな感じで、運ばれているんだなぁ、豚は。)
そう思いながら、目を瞑った。
 
 
ふいにブルーシートが開いてしまって
風が入る。山が見える。
それからちいさな、あられが入ってきた。
 
冷たい風。
 
ブルーシートをおさえながら
すこし走って
連れていってもらったピザ屋さんで
昼ごはんを食べた。
 
 

佐田さんの家をつくってくれる栃木の大工さんと
陽子さんと関わりの深いcimaiさんの2階、shureの改修をした大工さんが
同じひとだとわかったり

その後も共通の知人の名前が出てきて
道は通っていくのだなぁと感じる。
 
 
ピザ屋さんで、テーブルの順番を待っていると
ちょうどお芋屋さんのオーナーから
放射能に対する、オーナーの考え方と店の方針が
メールで送られてきて
 
陽子さんと佐田さんとそういう話もできて、よかった。
 
 
関東にいると
「福島」と、話題になるけれど
大阪にいれば
「東日本」と、話題になる。
 
なにを請け負って、自分たちが生きているのか
ということと
 
今のわたしが、
どう暮らして行くか
という話。
 
 
 
 
ピザを食べたあと、佐田さんの小屋へ行って
薪ストーブにやかんをのせて
陽子さんが持ってきてくれたお茶っ葉を入れた。

 
「美味しかったの」

昨年末、陽子さんが芦屋を訪れた際に
そこでいただいたお茶とおなじものだという。


芦屋へのその旅が、
陽子さんにとって
大切なものだったことを知っている。


 
くつくつと湧かし
紙コップに分け注ぐ。
 
茶葉のすこし混じったお茶の
甘いフレーバー


 
佐田さんは陽子さんのことを
「素敵なひとだね」と言った。
 
小屋は木屑が散っていたり
改装前で埃っぽい。
 
「こんなところで」と佐田さんは言ったけど
陽子さんが
「こんなところ」を、愉しんでくれるひとだと
わたしは知っている。
 
だから
ふたりに
会ってもらいたかったんだ。
 
 
自分が、どう生きて
どう生きられるのか
 
成長する、とか、目標をもつ、という方法じゃなくて
本質として、どう在ることが
自然なのか
 
探求している、ふたりのひと。
 
 
目の前のことに 立ち止まり
心の正直なところが見えるまで
時間をかけられる、それぞれのひと。
 



 
「小菅さんち行ってみようか」
と、佐田さんが言って
篠山へ移住した、友人宅を訪ねて帰ることにする。
 

 
小菅さんちへ行く前に
佐田さんが家の改修の間、借りている篠山の古民家に立ち寄り
陽子さんがくれた、茶葉を分けあった。

大きな台所にあがってアルミホイルに茶葉を包んでいく。
「陽子さんは?」と
玄関をのぞくと
広いその土間に、
陽子さんがぽつんと座っている。
 
連れ回している感じに、なっていないかな。と
ふわっと心配が湧く。
それと同時に
ひとりでいるその佇まいに
なんだか、とても、陽子さんらしいものが
感じられて
心に残った。
 
 
 

分け合った茶葉を持って
ふたたび、小菅家へ向かう。
 
車は街中からはずれていく。

広い田畑のなかに
ぽつんと、
小菅さんちはあった。
 
夜は深く、朝霧しずかにたちそうな
そんな場所にあった。

 
 

 
仕事柄、 
色んな物を、見て
きっと浴びる程、たくさんのものを見て
たくさんの人と会って、
生きてきたふたりが
これからの暮らしの場所として
篠山を選んだこと
 
小菅さん夫婦から
そのうちにゆっくり、聞かせてもらいたい。
 
 
それはきっとまた、
深い川に触れるような
ことになるんだろう。


 
 
「なおちゃん住んでいたのは狭山でしょう。これからは、さ、さやまだよ。
フェンスで1年くらい働いて、篠山にくればいい」
 
と小菅さんちのテーブルを囲いながら
佐田さんが冗談を言う。
 
 
篠山はいいところ。
 
自分がずっと、大阪にいるのか
狭山に戻るのか
それともぜんぜん、今はしらないところへ行くのか
さ、さやま、と篠山にいるのか
 
これからのことは、わからない
ということが
わかる。

 
 
「借金してしまったな」
小菅さんと佐田さんが、そう言い合う。
 
ローンを組んで
これから、支払い続ける覚悟をもって
 
生きて死んでいく
場所をみつけた

ふたつの家族。
 
わたしは、わたしの父のことを考えた。
 
 
 

奥さんのかんちゃんは
カップが空になるたび
ポットからお茶を、何度も
そっと、注いでくれた。

小菅さんたちも
その晩のうちに車で出発して
埼玉へ向かうと話してくれる。
 
陽子さんと私も
篠山から梅田へでて
そのまま別々の夜行バスで、埼玉へ帰る予定で座っていた。
 
篠山の、テーブル、その一点から
みんなバラバラに
その夜、関東へ向かう。
すこし前の、滞空時間を
共にしている。
 
夜が浮いていく。
 
 



さて、と腰をあげて
みんなでラーメン屋で晩ごはんをいただいてから
 
佐田さんと別れ
小菅さんちの車で
篠山口の駅まで送ってもらう。
 
陽子さんと私がエレベーターに乗るその瞬間まで
小菅さんたちは
手をふって見送ってくれていた。
 
 


陽子さんとふたり
大阪駅までまた
長い、長い距離
ごとごとと電車に乗って
きた道を戻って行く。
 
 
ふいに陽子さんが
佐田さんと私がどう見えたかと
話してくれる。
 
 
その目線が、わたしには嬉しかった。
 
 
大阪にくることを、佐田さんは本当に助けてくれた。
 
佐田さんだけではない。
くぼやん、くぼやんの奥さんであるようこちゃん
のこさん…
 
見送ってくれたひとの力もあるし
こっちで、待っていてくれた人たちがいる。
 
時間をつくって会ってくれたり
「家が見つかるまで、泊まっていい」と
言ってくれたりした人たち。
 
 
「自分って、自らを分けるって、書くでしょ。
ぼくは、自分っていうのは、自分の命を注げるひとまでのことを、いうと思ってる」
 
そう佐田さんは言った。
 
 
わたしは
わたしに、しがみつく。
 
それでも
本当は
それはきっと、本当の姿にならない。
 
 


 
わたしはいま
それを
すごく、教わって
学んでいる感じがする。
 

本当の芯から、知っていっている
気がする。
 
 
陽子さんは
きれいな人だ。
 
その目で、いまの自分を
見てくれたことが
嬉しかった。
 
 
 
また、梅田の
大きな街のなかに戻って
バス停を目指して歩く。
 
月が光ってる。
 
 
ひとに触れていくことで
生きていくことができる。
 
 
 
バスに乗り込む
陽子さんの姿を見送って
 
わたしも、リュック背負って
翌朝新宿駅着の
バスに乗る。
 
 

ここまで 
まだ、
週はじめの、はなし。
一週間は、長い。
 

 






2016年2月15日月曜日



ぼたぼたと降る雨
春の雨だ
 
空がおもたくなっている
 
地面が、あつくなっている
 
 
 
沈丁花を探しに行きたい
ここらではどこに、木があるんだろう
 
 
昨日は、五位堂という駅まで
お芋屋さんの仕事で出かけた。
 
近鉄に乗って、遠い。
窓の外の景色が変わって行く。
 
冬をこして枯れた田畑、近づいてくる山影。
 
ここはどこ、と思って調べたら奈良県だった。
 
 
 
ひとり、がたがたと
お店を開ける準備をする。
 
前日シフトだったしょうこちゃんが
エプロンの上に「がんばれ」というメモを置いてくれていた。
 
2台のオーブンをつけて、
へたを切ったお芋を入れていく。
 
オレンジのオーブンのあかり。
情景反射みたいに、心がじんとゆるむ。
 
大阪に引越してきたばかりの時
何もわからないまま色んな駅にいって
ひとりでお芋を売っていた時のことを思い出した。
 
2ヶ月前のこと。
 
さびしくて、
「どうしてここにいるんだろう」と思いながら
お店に立っていた。
 
でもオーブンで、お芋を焼くのは楽しかった。
軍手をはめてお芋の焼き加減を確かめに
オーブンに手を入れると、手もからだも、暖かくなった。
 
じっと焼いていれば
かたかった生芋は、甘い匂いだしてやわらかくなった。
 
オレンジ色のオーブンのあかりは
「わたしが好きなもの」だった。
 
何にも由来がなく、どこにいるのかもわからなかったけど
その、たしかに、好ましいもの、が自分の居場所になった。
 
 



2016年2月14日日曜日


ずっと、スケジュール調整の連絡を待ってもらっていた人がいて
気になっていたけど、自分の意志がかたまらないまま
動き出せないでいたので
保留が保留のままになっていた。
 
木曜日のミーティング
ぽっかり時間が空いて
聡くんとアオツキ書房まで歩いた日
 
さおりさんから電話がかかってきた日
 
ごん、と心が決まって予定も定まる。
 
夜にまたミーティングがあって、仕事をもらい
翌日もミーティングに向かうと
なっちゃんがガンガンと掃除機をかけていた。
 
春になったのだ。
 
なっちゃんとやりたい企画の相談も始まる。

その後向かった三宮では
佐田さんと長野の仕事のミーティングをした。
ひとりでは考えられないところに目線を入れてもらって、
進める感触を得る。

佐田さんと前世の話になったので
「また会えると思わなかったよ」とふざけて言ったら
「会えると思っていたよ」と笑いながら返事がきた。
嘘なのにけっこう心に残った。

 
翌日、
スケジュール調整を待ってくれていた人にメールを綴っていると
なおちゃんから電話がかかってきて、彼女が大阪に来てくれる日が決まった。
やわらかな近況も聞きながら
大阪でわたしが、「なおみちゃん」ではなく、
「なおちゃん」と呼ばれていることをあらためて思って
わたしはこっちでは毎日、大切な友人の名で、呼ばれているんだな
と思った。
なおちゃんが大阪へ来ると決まった日も
「この日は予定があります」と書き加えて
メールを送信する。
 
午前中にのんちゃんから
ケーキが届く。
手紙を読んで、胸がいっぱいになった。
それぞれの場所にいて
それぞれの目で、今をみていること。
 
午後からケーキを持って事務所へ行くと
夕方過ぎに全員が揃ったので
唐揚げとたこ焼きとポテトとビール、
なっちゃんの持ってきていたおむすびと高野豆腐とで
聡くんのところにきた、男の子の誕生を祝った。
 
わたしと仁美ちゃんの話で
「前世兄弟やったんちゃうか」と
また前世の話がでたところで
「わたし、仁美ちゃんとは兄弟だった感じがしない。
仁美ちゃんの飼ってる犬…」
と話す。
本当にそんな感じがしてくる。
 
吠える。
吠えて、仁美ちゃんを追いかけて走っている姿が
ありありと思い浮かぶ。
 
ありありと思い浮かぶ映像で
わたしは犬だけど
仁美ちゃんは現在の仁美ちゃんだ。
 
仁美ちゃんの飼っていた犬が、
私に憑依しているのかもしれない。

仁美ちゃんに、犬を飼っていたことがあるか
今度聞いてみよう。
(さっき聞いてみた。飼っていたことはないらしい)
 
聡くんのMacで、息子の動画を見る。
ちびっこい。やっぱり、可愛い。
ミルクを飲む様を
じっと見て、見続けていることができる。

 


 
 

「だめだって自分で思わないで、相談して」
 
この間の別れ際
くにちゃんがそう言った。
 
前にも言われたんだ。
「相談して」
と。
 
すごく、難しいことだと思った。
どう助けてもらえばいいのか
相手に何をしてもらいたいのか、
わからないのだ。
わかっていたとしても
それをしてもらえるか、わからない。
わからないものを、差し出すのは
怖い感じがするし
なんだか「いいこと」ではない感じがしていた。
 
でも、この頃少し、
すこしだけ、みえた。
 
状況を聞いて
どう関わるかは、相手が決めるのだ。
もしくは
互いに決めていくのだ。
さらには他の要素が入ってきて
関わりに加わったりもする。
有機的なこと。
 
だから
そのまま今の
困っていて
わけのわからない状況を
開いてもいいのかもしれない。
 
抱えきれていなくて
動けないでいて
わからないものを
「一緒にみてください」と言って。
 
「どうしたいの?」と照り返されて
じぶんの姿が
みえるようになることも、ある。
 
思いがけないように
道がみえることもある。
 
 
ギブアップだ。
 
ネバーギブアップで、
ギブアップなんだ。
 



2016年2月13日土曜日


 
仕事の予定調整で
さおりさんが電話をくれて
話しながら、ごごご、と
動いた。

予定が決まり、
空白が埋まる。
するべきことが見えてくる。

決まったから動く。
迷いをはさまないで、
無心で行う事務手続き。
 
 
動いたその晩に聡くんとミーティング。
意図が、ぐんぐんと、伝わってくる感じがあって
ビジュアルが見えてくる。
 
翌日も打ち合わせに事務所へ向かったら
なっちゃんが
ガンガンと掃除機をかけている。
 
大掃除のようなその気配に
ならば、と私もトイレ掃除を始める。
 
掃除を終えたあと
電気カーペットの上になっちゃんが縫いあげた
リネンの布をかける。
 
やわらかい
やさしい

空気が変わる
 

 
さりげないのに
感動的なほど違う。
 
 
 

聡くんと打ち合わせ、聡くんなっちゃんと打ち合わせ
なっちゃんと打ち合わせ。
巡っていく。

あいだにたこ焼きが挟まった。
しょうゆと、ソースとの2種類。
 
大阪のたこ焼きはくたっとしていて
銀だこしか知らないわたしには
衝撃的だけれど美味しい。
 
そしてたこ焼き屋が、ありすぎる。
 
ありすぎる、と感じるが
余ってはいない。
 
ここの人らはたこ焼きを本当によく食べるのだ。
 
たこ焼き屋があるから食べるのか
よく食べるからたこ焼き屋があるのか
はじまりがわからないほどに
それは当たり前にある。
 
そしてお好み焼き屋も同じようにして、ある。
 
 
夕方からは阪神電車に乗って神戸へ向かう。
三宮で打ち合わせがあった。
 
三宮の駅を降りて、意外なほどの都市感にびっくりする。
わたしは大阪の下町のたこ焼きモードを引っ張っていたが
大阪のおっちゃんおばちゃんはそこにはいない。
電車の高架が走り
大きなデパートが並ぶ都市のかたちは
新宿にも似ている。
しかも空気感は伊勢丹前らへんだ。
 
部屋着で街に出てきてしまったような気持ちで
とたんに緊張してくる。
 
さらに待ち合わせ場所は
クレフィという商業施設に入ったアーバンリサーチ、DOORSだ。

クレフィの場所をスマートフォンで検索しようかと思ったけれど
目の前にひとがたくさんいる。と思って
駅でひとを待っている女の子に道を訪ねた。
 
「すごい、南の方なんですよ」

彼女は言う。
 
東西南北で
場所を説明しようとしている。衝撃。
 
「方角的には、とにかく南です」
 
感動。
 
わたしは南へ進んだ。

 


 


2016年2月12日金曜日


 
ここのところは
自分の振る舞いの居所がわからない。
 
この間
わたしが過去の体験を話しているときに口にしていた
「嘘をついてまで、誰のことも大切にしていなかった」
という言葉を、
なっちゃんが面白い、となぞってくれた。
 
口からこぼれて、耳で拾っていなかった言葉。
なっちゃんの耳が拾って
もう一度口にしてなぞってくれたことで
自分の姿が見えてくる。
 
嘘をついてまで、自分も含めて、そこにいる誰のことも大切にしていなかった時の
虚しさがあるから
虚しさの虚しさの奥のどうしようもなくなった時から
嘘をつかない、という反転が自分に起きている。
 
そこにいるひとを、見る。
自分を、よく、見る。
 
という、動きが始まっている。
 
だから、嘘に敏感になる。
 
自分がそこに、懸かっているから。
 
嘘ばかりついて、わからなくなって
もう明日がこなければいいな、と
いまからみえれば「なにを、かんたんに」
でもその時は、そうとしか思えない気持ちでいた自分が
向こうにいるから。


2016年2月11日木曜日



朝、目を覚ましたら
鳥がキィーキィーと鳴く声がした。
ねじまき鳥みたいだな、と思う。
 
 
手紙を書いたり、
メールをうったりしていて
気がついたら10時前になっていたので
ミーティングの時間だ、と急いで家を出て
自転車を漕いでfence worksの事務所へ向かう。
 

いつもと違う道から行くと、
通りの先の公園が目に入って
「公園まで散歩したり、しよう」
と、思う。
ふらりと歩いたり、という時間を
しばらく持っていないな、と思いながら。
 
 


事務所に着くと一番乗りで
鍵を開け
誰もいない部屋に入って
ぜんぶの窓を開けて
空気を入れ替える。
 

パソコンを開くと
なっちゃんから
「今日のミーティングはなくなったよー」
という内容のメールがきていた。
 
みんなさんさんばらばら、仕事で出払っているらしい。
 
 
思いがけず、ぽかん、とできた余白に
それぞれの出かけていく足音が、聞こえてくるような感じがした。
 
 
 

色んなことを
ごたごたとしたまま抱えていたので
ひとり
地図を開き直す時間にしようか、と思う。
 
連絡したかったひとに、連絡をして
自分のスケジュールを見直して
必要なことを、整理したい感じがあった。
 


ひとまず、と思って
お湯を沸かしてお茶を飲んでいると
聡くんがやってきた。
 
先日
父親になった聡くんを見て、
おめでとう、という気持ちも込めて
「おとうさん、」と声かけると
「いややわ〜、もてへん〜」
と、聡くんは言った。
  
 

 
 
みんな、いないし、
この時間をどうしたものかと思っていると

「散歩したいなと思って」
「歩きながら話すっていうのはどうだろう」
と聡くんが提案をくれる。
 
スタンダードブックストアを教えてくれた聡くんと一緒に
アヤコちゃんが教えてくれた、
アオツキ書房に行きたい旨を伝える。
いい予感がする、古本屋さん。
アヤコちゃんが手紙に「行くといいよ」と書き添えてくれて
ホームページを見たときから
聡くんにも話そうと思っていた。
 
 
地図を調べる。
思っていたより、近そうだ。
 
ひとまずそこを目指して、歩き始める。
 
喋りながら
橋を渡る。
 
向かい岸に渡ると、街が変わる。
 
 
通りすがり
街路樹の下にローズマリーが雄々しく繁っているのを見て
今度ハサミを持って、ここにもらいにこよう、と思った。
ローズマリー、青くて小さな、花が咲いている。
 
 
話すことは、たくさんある。
 




 

2016年2月10日水曜日



スーパーに行って食材を買う。
食べきれるだけ。と思うと
けっこう少ない。

毎食、きちんと、料理を作れるわけでもないから。
 
 
 

精肉コーナーに久しぶりに行った。

24時間空いているスーパーは
激安で便利だけれど、品質にちょっと不安ありなので
お肉やお魚を買うのは避けていて

もう一軒、精肉コーナーをみた、そのスーパーまで
行く時間や心もちを、なかなか持てないでいたから。
 
ひさしぶりに訪れたそのスーパーの精肉コーナーで
鶏と迷って、豚肉を買う。
わたしは豚肉を美味しいと思う。
 
それでも最近、お肉は思っていたより
必要ないのではないか
と感じるようになってきた。
 
引越してきてしばらくは、引越し疲れと
台所を使う気力が出ず
グラノーラやお芋ばかり食べていた。
時々友人が食事をごちそうしてくれた。
 
このところ少しずつ
お芋もそうそうもらっていられないし
(「お芋食べ放題!」とは言ってもらっているものの、初めの頃は、お芋の味をおぼえたかったのと、焼き加減を確認するために割ったお芋を、持ち帰ったりしていた)
なんとなく、小さな水回りの使い勝手も覚えて
自炊にむかい始めている。
 
そうする中で
ここまでの二ヶ月、何を食べていたんだっけ
と思い返すと、お肉はあまり食べていないな。と思った。
というか、ほとんど。
卵も買っていないから、外食以外で食べていない。
牛乳は飲んでいる。
わたしは牛乳を、美味しいと思う。
山形出身の祖父は、白飯に牛乳をかけて食べていた。
(わたしは、これは、美味しくないと思っている)
 
けっこう、
動物性のものって、いらないのかな
と、最近、思い始めたところ。

それでも
風邪をひきそうになって、お肉を食べると元気になったりもするし
美味しいな、と思うから
ゼロにするまでのストイックさはない。
 
でもお肉を続けて食べているときの、
からだが重たい感じもわかるようになった。
 
パワーも出るけど
消化に使うエネルギーも大きい。
よく聞くはなしは、どうやら本当のようだ。
 
それから、
友人が狩猟をはじめた話をききながら
自分が穫れないものを食べるのって、どうなんだろう…とも
考え始めている。
 
そんなことをいったら、
わたしはいま、食べ物を何も生産していないから
野菜だって、食べられないことになっちゃうけれど

罠で猪をとらえて、気絶させて、仕留めて
解体して、いただいた、友人からその話を聞いたら
お肉はもともと、そんなにたくさん、食べられるものではないのじゃないか
と、感じるようになった。
 
 
自分(ひと)の手でできることの範囲が、
たべられる範囲なのではないかな

感じ始めてきた。
機械とか、大きなちから、というのを
さし引いたところで。
 
もし、小さな村で暮らしていたら
肉は時々、手に入るだろう。
 
狩猟にいっている仲間が、狩猟を始めたその友人のようにして
きっと穫ってくる。
でもやっぱり、きっと
時々、すこしずつなんじゃないかな。
すぐにいただけるものと、干したり、塩漬けにしたり
色んな方法で、大切に分けて食べるだろう。
 
野菜も食べられる。わたしも田畑を耕すと思う。
 
たまごは毎日手に入るのだろうか。
放し飼いにされた鶏は、1日にどのくらい卵を産むんだろう。
 
なんだかそんな風に
食べ物の思考がミニマルになりつつあるのだけれど
 
でも、食べることは
大好きだ。
 
ごはんは、美味しい。
 
そしてお菓子も大好きだ。
近くの薬局でブルボンのチョコリエールがいつも100円で売っていて、うれしい。

珈琲も好きだ。
アアルトコーヒーの豆がなくなって
美麻珈琲の豆を飲み始めた。
 
この間うちに来た友人に淹れてもらったら
わたしが淹れるよりも
澄んでて美味しかった。
 


 

2016年2月4日木曜日

 
モンステラはひと皮むけた。
 
茎がしゃんとしているし、
葉が青々としている。
 
春だ、ということなのかもしれない。
 
 
 

昨日、東京から友人がやってきた。
京都を訪れているので会えないかと連絡をくれて

新大阪20時頃発の新幹線に乗るまで、と
夕方、わたしの暮らす街まで来てくれた。
 
大阪にくる糸を、繋いでくれたような友人。

横断歩道を渡ってくる姿が待ち合わせ場所から見えて、
手をふったら遠くから彼女も手をふって
それから、足がはやまり、たったっと、駆け寄ってきてくれた。

彼女とも縁のある場所だから
商店街をぬけながら
一緒にfence worksの事務所へ向かった。
 
17時頃から、彼女と事務所へ行きます
と伝えていて
17時過ぎに事務所へ入ったら
さっきまでみんながそこにいた気配があるのに
誰の姿もない。
ふたりで話す時間をくれたのかな、と思いながらお湯を沸かして
お茶を淹れた。
 
テーブルにぽんぽんと並んでるMacBook
暖房をきったばかりの部屋
 
会ったばかりの空気のざわざわを
上着と一緒にぱらぱらと脱ぎ落として
彼女とふたり
おやつを食べて
お茶を飲みながら、会っていない間のことや
最近のことを語り始めた。
 
そうしている間に
ほろほろと事務所にまたみんなが集まってきて
テーブルを囲んだ会話が、ぐんとエネルギッシュになっていった。
 
彼女の明日の予定を確認したあとで
「泊まったら?」と、声があって
一瞬、あたまの中に散らかった部屋が思い浮かんだけど
まだ話していたいな、と
「うちに泊まったらいいよ」とわたしが続けたら
出発を明朝に見送って、彼女が泊まってくれることになった。
 
不思議な夜だ。
予定は、未定。
 
9時を過ぎて、ぱらぱらと解散する。
 
帰り道を、彼女とたどりながら
家に食材がないことを伝えたら
王将で食べよう、と言ってくれて
晩ご飯は王将で生ビールを飲みながら餃子や揚げ焼きそばなんかを食べた。
生ビールはぐっと美味しくて、
彼女が笑った嬉しさが
からだを緩めた。
 
部屋に帰って、ふたりとも荷をおろし
さて、と小さな湯船にお湯をはるとき
誰かのために湯をためるって
なんか温かいな…と感じる。
 
お湯を沸かすのも
お茶を淹れるのも
彼女がいるから。
 

 

黒い髪の、きれいなひと。

「このひとは貴族や」とさっき言われていたっけ。
 
だけどなんだかやわらかくて、
あついくらいの、体温があるひと。
 


寝入りばな
隣人が帰ってきた音がして
ふとんの中の彼女が
しずかに眠れるといいな、と思った。
 
 
 
今朝、
彼女のスマートフォンのアラームの音で目を覚ます。
 
「なおみさん、何時だったかわからないけど寝言いってたよ」
「え、なんて言ってた?」
「『なんで?』って言ってた。びっくりした。寝言か、と思って」
「夢みてたのかなー。おぼえてない」
「そこだけ声になったんだね。ふしぎ」
 
寝言って、一緒に寝てるひとがいて
わかるんだなぁと思った。

 
 

「また今日も、ここに帰ってきそうな気がする」
「わたしも、おかえりって、いいそうな気がする」

そう言い合いながら、駅の改札で別れて
彼女を見送った。
くしゃっと笑う顔と
前をむき直した、背中。
 
  

 
さて今夜は
引越してきて初めて、お米を炊く。
そんな気分にふとなった。
 
立春。



 

 

 
 


 

2016年2月2日火曜日


今朝、目に入ったモンステラが
すごくいきいきしている。
 
気のせいかな、と思って
今もう一度確認したけれど、確かにいきいきしている。

長野の水を、のんだからかな。
植物は素直だから、そうなのかもしれない。
もっとたくさん、水を汲んできてあげたらよかったな、と思った。
 
 
 
 
それから
昨日も感じたのだけれど
今朝自分で淹れた珈琲を飲んでまた思った。
前よりもすこし美味しく、珈琲を淹れられるようになった。

美味しいと、感じられるようになった、の方かもしれないけれど。


 
2月

なんとなく、もうあたたかい。
 
 
 

 


2016年2月1日月曜日


 
水筒のなかの
長野の水を
モンステラにあげる。